XPRIZE Healthspanとは【$101M健康寿命コンペ完全ガイド ─ ルール・Top40・日本勢・今後】
賞金1億ドル超($101M)、7年がかりで「健康寿命を10〜20年取り戻す」治療を競う世界最大の老化コンペ、XPRIZE Healthspan。基本ルール、600超チームの規模、準決勝Top100とマイルストーン1のTop40、日本勢(AutoPhagyGO・電通連合ほか6チーム+FSHD2チーム)、機序別の注目チーム、2030年までの展望を一次情報で整理するハブ記事です。
最終更新: 2026年6月 / 監修: WSN. 私たちは、死なない。 編集部
結論(30秒で読める要約)
- XPRIZE Healthspanは、賞金総額 $101M(約150億円超)・7年がかりで、「健康寿命(healthspan)を10〜20年取り戻す治療」を競う、史上最大級の老化コンペです1。2023年11月開始、グランプリは2030年。
- 勝利条件が独特です。**50〜80歳の人で、筋力・認知・免疫の3機能を、1回の介入から1年以内に、最低10年(目標20年)分“若返らせる”**こと1。「寿命」ではなく「健康な期間」を、しかも短期で動かせるかを問うています。
- 規模は600超チーム・58カ国。2025年5月、準決勝=Top100が発表され、うちTop40がマイルストーン1(各$250,000)を受賞1。別枠でFSHD(筋ジストロフィー)ボーナス賞の8チームも選出。
- 日本勢が強い。Top40にAutoPhagyGO(大阪・電通/Curations連合のオートファジー)、ABE YOANDO PHARMA、Goda Lab、Time Traveler and Curreio、Japan Longevity Consortium、LOGIN の6チーム、さらにFSHD枠にModalis Therapeutics・Asagi Labsが入っています1。
- 主催資金はHevolution Foundation(サウジ系・年最大$10億規模)とChip Wilson(ルルレモン創業者/SOLVE FSHD)が筆頭、製薬パートナーにGSK1。
- 次の山は2026年4月に各チームが臨床データ提出 → 7月に決勝10チーム発表(第2マイルストーン$10M)→ 2026〜2029年に本番の臨床試験。本記事はそのハブとして、各チーム個別記事へつないでいきます。
- 本記事は競争の整理であり、特定の治療法の有効性・安全性を保証するものではありません。情報は最終更新時点のものです。
▼ あわせて読む(前提知識)
- 老化のしくみの地図 → 老化の12のホールマーク完全解説
- 挑戦の全体像 → 不老不死への挑戦マップ
- “若返らせる”技術 → 細胞のリプログラミングとは
対話で読む:1億ドルで「何」を競っているのか




1. XPRIZE Healthspanとは ─ なぜ画期的か
そもそも「XPRIZE」とは
XPRIZEは、「巨額の賞金を懸けて、世界中の誰でも参加できる競争を仕掛け、人類の難題を一気に解かせる」アメリカの非営利団体です。起業家・未来学者の Peter Diamandis(ピーター・ディアマンディス) が1990年代に創設しました。仕組みは**「インセンティブ・プライズ(懸賞型の競争)」——あらかじめ達成すべきゴールと賞金を公表し、成功したチームにだけ賞金を払う。結果にしか払わないので、主催側は賞金額をはるかに上回るR&D投資と挑戦**を世界中から引き出せる、というのが狙いです。
名を一躍有名にしたのが、2004年の「Ansari XPRIZE」(賞金$10M)。民間による有人宇宙飛行を競い、SpaceShipOneが達成して、その後の民間宇宙産業(ヴァージン・ギャラクティック等)の火付け役になりました。以後、Google Lunar XPRIZE(月面探査)、$100MのCarbon Removal(CO2除去・イーロン・マスク出資)、熱帯雨林・山火事・識字など、分野を超えて数々の競争を運営してきた“懸賞コンペの総本山”です。
健康・老化版が「XPRIZE Healthspan」
その健康・老化分野版として、創設者 Peter Diamandis らが2023年11月に立ち上げたのが XPRIZE Healthspan1。
狙いは「寿命(lifespan)と健康寿命(healthspan)のギャップを埋める」こと。世界の平均寿命はこの100年で倍以上に延びましたが、健康に過ごせる期間はそれほど延びていません。米国では、寿命と「健康寿命(大きな病気や障害なく過ごせる期間)」の差が約12年あるとされます1。つまり人生の最後の十数年を、多くの人が不調を抱えて生きている。この“最後の十数年”を健康側に取り戻すのが、このコンペの主題です。
健康寿命(healthspan)とは? 単に「何年生きたか(寿命=lifespan)」ではなく、「心身が元気で、自立して過ごせた期間」を指します。XPRIZE Healthspanが測るのは寿命の長さではなく、この“元気な期間”を延ばせるか——ここが他の長寿研究と一線を画す点です。
2. 基本ルール(賞金・主催・タイムライン)
- 賞金総額:$101M(約150億円超)。グランプリは最大$81M1。
- 期間:7年(2023年開始〜2030年グランプリ)。途中に2つのマイルストーン。
- 主催・資金:Co-Title SponsorがHevolution Foundation(サウジアラビア・リヤド拠点、年最大$10億規模の非営利。CEOは Mehmood Khan)と、Chip Wilson(ルルレモン創業者。筋疾患FSHDの非営利 SOLVE FSHD を主宰)。GSKが公式製薬パートナー1。
- 参加資格:薬・バイオ医薬・遺伝子治療・医療機器・食事・生活習慣・行動療法、またはその組み合わせまで幅広く可。ただし各チームが自前で倫理・規制の承認、安全性監視、医療監督を確保する必要があります1。
3. 勝敗の決め方 ─ ここがコンペの“本体”
このコンペの本質は賞金額ではなく、**「どう勝敗を決めるか」**にあります1。
- 対象:50〜80歳の成人
- 戻すもの:筋力・認知・免疫の3機能
- どれだけ:最低10年分、目標20年分の若返り
- どれくらいの期間で:1回の介入から1年以内
「マウスで寿命が延びた」「ある指標が改善した」ではなく、ヒトで・機能を・短期で・まとめて戻せるかを問う。これは老化研究で最も難しい部類の課題設定です。決勝に進んだチームは、2026〜2029年に最長1年のヒト臨床試験を行い、その結果で競います。試験データは**ユタ大学のデータ調整センター(DCC)**が一元管理します1。
4. 規模と内訳 ─ 600超チーム・58カ国
応募は600超チーム/58カ国。アプローチは多様で、主催も「単一の手法が支配的ではない」と総括しています1。提案の大分類は次のとおり。
- バイオ医薬(biologics):細胞・エクソソーム・免疫など
- 薬・低分子:メトホルミン、GLP-1、ラパマイシン類縁など既存薬の転用も多数
- 生活習慣・行動:運動・食事・睡眠・社会的つながり(マレーシアの高校生チームは高齢者の“ドラムサークル”を提案)
- 医療機器:超音波などの物理刺激
- 機能性食品・ニュートラシューティカル:オートファジー誘導など
作用先も、代謝・炎症・幹細胞・ミトコンドリア・神経新生など全身に及びます。ノーベル賞受賞者が参加するチームもあると報じられています2。
5. マイルストーン1=Top40(機序別の注目)
2025年5月、準決勝Top100のうちTop40が**マイルストーン1(各$250,000)**を受賞しました1。機序の系統で代表例を挙げます(→ 個別の詳細記事は順次追加予定)。
- オートファジー(自己浄化):AutoPhagyGO(大阪/電通・Curations連合「Autophagy Reboost Program」)
- ミトコンドリア:Mito-Tags、Mitochondrial All-Stars、Mitochondrial Bioenergetics and Ketone Utilization
- 免疫・胸腺の再生:Intervene Immune、Longevity Immunotherapy
- 細胞・再生医療:Longeveron、Kimera Labs(エクソソーム)、Prometheus Cell Team
- 既存薬の転用:MetHealthspan(メトホルミン)、AgelessRx、GLP-1系
- 代謝・アミノ酸:Team GlyNAC(グリシン+NAC)
- マイトファジー成分・機器:Timeline(ウロリチンA=Amazentis系、→ウロリチンAの選び方)、低周波超音波チーム
注:これは40チームの一部です。全リストは公式の「Qualified Teams Book 2025」を参照ください(本記事末尾リンク)。
6. 日本チーム ─ Top40に6チーム+FSHD枠に2チーム
日本勢の存在感が際立ちます。マイルストーン1のTop40に入った日本チームは次の通り1。
- AutoPhagyGO(大阪)── オートファジー起点の「Autophagy Reboost Program」。広告大手の電通、Curationsとの連合で、物語性・実装力でも注目。
- ABE YOANDO PHARMA CO LTD(東京・足立)
- Goda Lab(東京・文京)
- Time Traveler and Curreio(東京)
- Japan Longevity Consortium(東京)
- LOGIN(Longevity Innovator)(仙台・宮城)
さらに、FSHD(顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー)ボーナス賞の8チームにも、日本から**Modalis Therapeutics(東京・ゲノム編集)とAsagi Labs(長野)**が選ばれています1。
日本のオートファジー研究(大隅良典先生のノーベル賞、吉森保先生の系譜)や再生医療の蓄積が、こうした国際コンペでの層の厚さにつながっていると見られます。各チームの詳細は、個別記事で順次掘り下げます(→ 近日)。
7. FSHDボーナス賞というもう一つの戦い
本体(健康寿命)とは別に、$10MのFSHDボーナス賞が設けられています。FSHDは筋肉が徐々に衰える遺伝性疾患で、治療選択肢が限られます。1年以内に失われた筋機能をどれだけ回復できるかを競い、1位は$8M1。スポンサーのChip Wilson自身がFSHD根治を掲げる SOLVE FSHD を率いており、Wilson家は同分野に$100Mを拠出しています。**ゲノム編集(Modalis、Epicrispr)**などの先端アプローチが並ぶ、見どころの多いサブ競争です。
8. 対話で検証:本当に「10年若返り」は測れるのか




9. 今後の展望(2026→2030)
- 2026年4月:各チームが初期臨床のデータを提出。
- 2026年7月:決勝10チームを発表(第2マイルストーン$10M)。
- 2026〜2029年:決勝チームが最長1年のヒト臨床試験を実施(50〜80歳対象)。
- 2030年:**グランプリ(最大$81M)**決定。
注目は、(1) 日本勢がどこまで決勝に残るか、(2) 既存薬転用(メトホルミン・GLP-1)か、先端のバイオ・細胞・機器か、どの系統が機能改善を出すか、(3) 「健康寿命を測る標準」がこのコンペを通じて確立されるか。いずれも、本記事をハブとして続報・個別記事で追っていきます。
関連記事(WSN内ハブ)
- 老化の12のホールマーク完全解説 — 各チームが狙う“老化の標的”の地図
- 不老不死への挑戦マップ — 長寿研究全体の中でのXPRIZEの位置
- 細胞のリプログラミングとは — 「若返らせる」技術の基礎
- シンクレア×全身リプログラミング — 関連する若返り研究
- ウロリチンAの選び方 — 参加企業Timeline系のマイトファジー成分
- スペルミジンの選び方 — オートファジー誘導の成分
- 人はなぜ死ぬのか、死は不可避なのか — そもそも論
参考文献(主要なものを抜粋)
1. XPRIZE Foundation. $101M XPRIZE Healthspan Awards First Milestone Winners. 2025年5月12日(公式発表). / XPRIZE Healthspan 公式競技ページ・競技ガイドライン v2.1.(賞金$101M・7年・目標〔筋/認知/免疫を50-80歳で1年以内に10〜20年若返り〕・600超チーム/58カ国・Top100準決勝・Top40マイルストーン1=各$250k・FSHDボーナス8チーム・主催Hevolution/Chip Wilson・GSK・タイムライン2026データ提出→2026年7月決勝10チーム→2026-2029臨床→2030グランプリ最大$81M、ユタ大DCC)
2. Mikhail A. Global longevity competition for $101 million names semifinalists. Fortune. 2025年5月12日.(準決勝の概況。学生からノーベル賞受賞者まで参加、メトホルミン・GLP-1・ドラムサークル等の多様な提案)
編集方針・免責事項
- 本記事は、公開情報をもとにXPRIZE Healthspanの概要・参加チームを整理したもので、特定の治療法・チームの有効性や安全性、受賞の確実性を保証するものではありません。
- 「マイルストーン受賞」は提案や初期段階の評価であり、ヒトでの効果が実証されたことを意味しません。本番は2026〜2029年の臨床試験です。
- チーム名・所在地・選考状況・日程は発表時点の情報で、今後変動します。最新情報は公式(xprize.org/healthspan)をご確認ください。本記事は随時更新します。
この記事は WSN. 私たちは、死なない。 編集部により2026年6月に作成・公開されました。XPRIZE Healthspanの進行に合わせて随時更新します。
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