
生き物に学ぶ長寿・極限
ベニクラゲ、クマムシ、ニシオンデンザメ、ハダカデバネズミ…。桁外れの長寿や極限耐性をもつ生き物から、老化と不老のサイエンスを学びます。
- メイ&トキの対話論文ピック2026年9月1日
コウモリはなぜ長生きなのか ─ ウイルス対策・がん抵抗性・寿命をつなぐ遺伝子【2026】
2026年8月、Nature に、Myotis属のコウモリ8種のゲノムを解読した研究が公開されました。体の小ささに比べて並外れて長生きするコウモリでは、がんに関わる経路やウイルスと戦う遺伝子に進化の跡が集中し、抗ウイルス遺伝子PKRのコピー数が種によって1〜3個と違い、長寿種の細胞はひどく傷んだ細胞を積極的に始末していました。ウイルスへの適応・がん抵抗性・寿命が、同じ遺伝子群でつながっている可能性を示す枠組みです。ただしこれはゲノムの比較と培養細胞までの話で、ヒトの寿命を延ばす手段にはまだつながっていません。何がわかって、何がまだ言えないのかを線引きします。
- メイ&トキの対話論文ピック2026年8月4日
ほとんど老いないチョウ「ヘリコニウス」 ─ 花粉食と進化の、どちらが効いているのか
2026年、ブリストル大学らのグループが、熱帯のドクチョウ属(Heliconius)が近縁種より数倍長く生き、極端な比較では最長348日と14日で約25倍の差になると報告しました。加齢による体の衰えもほとんど見られませんでした。長寿の要因として、成虫が花粉を食べてアミノ酸を得ること(食事)と、花粉とは独立に進化した生物学的な変化の2つが挙げられています。昆虫の話がヒトに何を言えて、何を言えないのかを線引きします。
- 話題を検証2026年7月10日
400年生きるサメ? ─ ニシオンデンザメが教える“ゆっくり老いる”科学と、不老との違い【2026】
北極の深海に、推定で400年前後を生きるサメがいます。ニシオンデンザメ——2016年、目のレンズに残る「炭素の記録」を核実験の痕跡で読み解き、少なくとも272年、最大で512年という、現生の脊椎動物で最長寿の可能性が示されました。冷たい海でゆっくり泳ぎ、ゆっくり歳をとる。でも“不老”ではありません。老いないのではなく、老いる速度が桁違いに遅いだけ。何がわかっていて、なぜアンチエイジングと地続きなのかを、WSNが正直に線引きします。
- 話題を検証2026年7月10日
クマムシは「最強生物」って本当? ─ 乾眠で宇宙も耐える力と、“不死ではない”線引き【2026】
乾燥にも、真空にも、放射線にも耐える——「地上最強生物」と呼ばれるクマムシ。体を乾かして代謝をほぼゼロにする「乾眠(クリプトビオシス)」で、宇宙空間にさらされても生き延び、DNAを守る特別なタンパク質(Dsup)まで持っています。でも、それは“不老不死”ではありません。ふつうに動いているクマムシの寿命は数か月で、乾眠は「時間を止めて待つ」だけ。何がどこまで本当で、なぜアンチエイジングと地続きなのかを、WSNが正直に線引きします。
- 話題を検証2026年7月9日
「不老不死のベニクラゲ」は本当に死なない? ─ 若返り(分化転換)の科学と、人に応用できない理由
大人(クラゲ)から子ども(ポリプ)へ戻って“若返る”ベニクラゲ(Turritopsis dohrnii)。2022年にはゲノムまで解読され、DNA修復・テロメア維持・幹細胞の遺伝子が若返りの鍵として浮かびました。ただし「不老不死」は老衰を避けられるという意味で、捕食や病気では死にます。何がわかっていて、なぜ人にそのまま応用できないのかを、一次情報で整理します。
- メイ&トキの対話入門2026年6月21日
なぜハダカデバネズミは老化しないのか【がん耐性と長寿の生物学 ─ メイ&トキ&デバの対話】
体長10cmほどのハダカデバネズミは、最長37年も生き、しかも「歳をとっても死亡率が上がらない」“ほぼ老化しない哺乳類”として老化研究の主役です。がんにもほとんどならない。その鍵とされる高分子ヒアルロン酸や、2023年にその遺伝子をマウスへ移して寿命を延ばした研究まで、読者代表メイ・編集部トキ・長寿の達人デバの対話で、「ヒトにどこまで言えるか」を整理します。