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「老化速度」は本当に測れるのか ─ テレビの話題と、DunedinPACE・国内エピクロックの現在地

WSN. 私たちは、死なない。 編集部·公開: 2026年7月30日·最終更新: 2026年7月30日

最終更新: 2026年7月 / 監修: WSN. 私たちは、死なない。 編集部

メイ
メイテレビで「老化のスピードが測れる」「ヨーグルトで老化が遅くなる」って見ました!本当なんですか?
トキ
トキ半分本当で、半分は注意が必要です。話題の「老化速度」の多くはDunedinPACE(いま何倍速で老いているかを測るDNAメチル化の指標)に由来します。森永乳業の2026年の試験では、生活改善で約2.3%の減速が報告されました。ただし、これはヨーグルト単独ではなく食事・運動込みの生活改善パッケージを、何もしない群と比べた結果なんです。
デバ
デバふぉっふぉ。しかも"速度"は物差しによって数字がずれる。テレビで見た速度と、検査サービスで買える「老化スピード」は別物のことが多い。そこを混ぜると危ういぞ。
「老化速度は測れる・減らせる」をどう読むかの全体像。老化速度=DunedinPACEは、いま何倍速で老いているかを測るDNAメチル化の指標で、1.0が基準(暦の1年で1年ぶん)。森永乳業の探索的試験では、48人の過体重男性を対象に、ビフィズス菌BB536ヨーグルト+食事指導+運動指導の多要素介入を3か月おこない、非介入群と比べてDunedinPACEが約2.3%低下したと報告された。ただしヨーグルト単独の効果ではなく、小規模・短期・非盲検・企業主導・バイオマーカーでの結果。さらに検査サービスで受けられる老化スピードは、DunedinPACEではなく第2世代の別クロックのことが多い。芯は、速度は追跡には使えるが、単発の数字と商品の売り文句は鵜呑みにしないこと。
図:この記事の全体像 「速度は測れる/減らせる」の中身を分ける。青=しくみ・中立/緑=報告された前進/赤=過信は禁物。

1. 「老化速度」とは何か ─ DunedinPACEの発想

まず言葉から。ふつうの「生物学的年齢」は、**いま何歳ぶんか(積み上がった老化の量)を表します。これに対して老化速度(pace of aging)**は、**いま、どれくらいの速さで老いているか(1年あたりの進み具合)**を表します。同じ「40歳」でも、これから速く老ける人とゆっくりな人がいる——その"進行中の速さ"を数値にしよう、という考え方です。

代表格がDunedinPACE(デュニーデン・ペース)です。ニュージーランドで1972〜73年に生まれた約1,000人を数十年追った研究で、腎臓・肝臓・心臓・免疫などが実際にどのくらいの速さで衰えたかを測り、そのペースを**DNAメチル化(遺伝子のオン・オフを決める化学的な"印")**から一回の採血で当てられるようにしたものです。出力は倍率で読みます。1.0=暦の1年で生物学的にも1年ぶん老いる1.2=2割速い0.8=2割遅い、という具合です。積み上がった年齢ではなく"速さ"を見るので、生活を変えた前後で短期間でも動きやすいのが特徴で、テレビで「スピードが測れる/遅くできる」と紹介される話の多くは、この指標に連なっています。

2. テレビの「食品で老化が遅くなる」は本当か ─ 森永BB536試験を読む

話題の火付け役の一つが、森永乳業が2026年に Aging 誌で報告した試験です。中身をそのまま見ます。

対象と方法。 50〜74歳の過体重の男性48人を、介入群と非介入群に分ける探索的な無作為化・非盲検(どちらの群かを本人も知っている)試験です。介入群は、ビフィズス菌BB536配合ヨーグルトを1日100gとりつつ、**食事指導(食べ過ぎや間食・加糖飲料を控える)と運動指導(ウォーキングやステッパーを1日30分・週3日以上)**を3か月続けました。そのうえで、DNAメチル化にもとづく老化指標を測りました。

結果。 介入群では、非介入群と比べてDunedinPACEが有意に低下し、老化の進行速度が約2.3%遅くなる可能性が示されました。生活改善で老化速度の指標が動きうることを、日本人で示した点は意味があります(DunedinPACEは短期でも動く設計だからです)。

ここが線引きです。 見出しだけを取ると誤解します。

まず、これは**「ヨーグルトの効果」ではありません**。介入はヨーグルト+食事改善+運動パッケージで、比較相手は何もしない群です。ヨーグルト単独の群がないので、2.3%のうちどれだけがヨーグルト由来かは切り分けられません。素直に読めば「生活をまとめて整えたら指標が動いた」という話です。

次に、規模と設計です。48人・3か月・過体重の男性のみ・非盲検・探索的という、初期段階の小さな試験です。非盲検で生活改善を課す設計は、参加者の"やる気"や期待の影響も混じりえます。そして森永乳業が主体の試験なので、利益相反を踏まえて読むのが公平です。

最後に、動いたのは**バイオマーカー(DunedinPACE)**であって、病気が減った・寿命が延びたという結果ではありません。速度計の針が少し戻ったのは前向きな一歩ですが、それが健康長寿に結びつくかは、これからの大規模・長期の検証を待つ話です。

メイ
メイじゃあ、検査を受ければ自分の「老化速度」が分かるんですよね?
トキ
トキ受けられます。ただ、そこで出る「老化スピード」は、研究で使われるDunedinPACEとは別の物差しのことが多いんです。国内で広く受けられるエピクロック®テストは、日本人向けに最適化した第2世代のエピゲノム時計で、DunedinPACEそのものではありません。
デバ
デバふぉっふぉ。同じ「速度」でも、測り方が違えば数字も意味も変わる。看板の言葉だけで同じものと思い込むでないぞ。

3. 検査で受けられる「老化スピード」は何を測っているか ─ 国内エピクロック

日本でいちばん広まっている生物学的年齢検査が、レリクサ社のエピクロック®テスト(2024年提供開始)です。約2mLの採血から、生物学的年齢(エピゲノム年齢)・老化スピード・15項目以上の健康指標(テロメア長、免疫・炎症・血管・代謝・腎・肺の機能、喫煙やアルコールの曝露など)を返します。

大事なのは中身です。エピクロックは、欧米の時計をベースに日本人のメチル化データを学習させて最適化した「第2世代」のエピゲノム時計で、DunedinPACE(老化"速度"に特化した第3世代)とは設計が違います。どちらもDNAメチル化を使いますが、測っている構成概念が別です。つまり、テレビの研究で出てくる「老化速度(DunedinPACE)」と、検査サービスの報告書に載る「老化スピード」は、名前は似ていても同じ数字ではありません。検査そのものを否定する話ではなく、"何を測った速度か"を確かめて受け止める必要がある、ということです。

4. ここが線引き ─ 「測れる」の中身を分ける

はっきり整理します。

速度は「追跡」には使えます。 DunedinPACEのような速度の指標は、同じ人が生活を変えた前後で動きやすいので、介入の効果を追うのに向いています。森永の試験も、その使い方で「指標が動いた」ことを示しました。

でも、単発の数字は鵜呑みにできません。 どの時計・どの検体を使うかで、生物学的年齢の数字は大きくずれます(同じ血液でも時計しだいで平均17歳ずれた、という報告もあります → 別記事 で詳しく)。「あなたの老化速度は◯倍」という一回の結果を、そのまま真に受けないことです。

検査の「老化スピード」=研究のDunedinPACE、ではありません。 消費者が受ける検査は、DunedinPACEとは別の第2世代クロックのことが多く、報告書の数字を論文の話とそのまま同一視できません。

食品・サプリの「減速」報告は条件付きで読みます。 多くは、生活改善パッケージ・小規模・短期・企業主導・バイオマーカーでの結果です。「これを食べれば老化が遅くなる」と単純化しないことです。

そして土台は変わりません。速度計の数字より確かなのは、睡眠・運動・食事・禁煙・節酒という基本です。森永の試験で効いたのも、突きつめればまとめて生活を整えたことでした。

まとめ ─ 30秒でおさらい

  • 老化速度は「いま何倍速で老いているか」を測る考え方で、代表格がDunedinPACE(DNAメチル化の指標。1.0が基準)です。テレビの「スピードが測れる」話の多くはこれに由来します。
  • 森永乳業の2026年の試験(Aging)では、生活改善の多要素介入で老化速度が約2.3%減速したと報告されました。ただし48人・3か月・非盲検・過体重男性のみ・企業主導の探索的試験で、ヨーグルト単独の効果ではありません
  • 動いたのはバイオマーカーで、病気や寿命が改善したわけではありません。
  • 検査サービスの「老化スピード」(国内のエピクロック等)は、研究のDunedinPACEとは別の第2世代クロックのことが多く、同じ数字ではありません。
  • 速度は追跡には有用ですが、単発の数字と商品の売り文句は鵜呑みにしないこと。土台は生活習慣にあります。

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参考文献(主要なものを抜粋)

1. (森永乳業ら). Short-term responsiveness of DNA methylation–based aging biomarkers to a multimodal intervention comprising exercise and dietary guidance involving daily consumption of yogurt containing Bifidobacterium longum BB536: an exploratory randomized controlled trial. Aging. 2026.(50〜74歳の過体重男性48人を対象にした探索的・無作為化・非盲検試験。BB536ヨーグルト+食事・運動指導の多要素介入を3か月おこない、非介入群と比べてDunedinPACEが有意に低下〔約2.3%の減速〕。企業主導・バイオマーカーでの結果。プレスリリースは森永乳業〔2026年〕。)

2. Belsky DW, ほか. DunedinPACE, a DNA methylation biomarker of the pace of aging. eLife. 2022;11:e73420.(Dunedin Studyの縦断データで測った臓器機能の衰えの速さを、DNAメチル化から推定する指標。1.0を基準に老化の"速度"を表す。)

3. Rhelixa(レリクサ). エピクロック®テスト(生物学的年齢検査). 2024年提供開始(日本人向けに最適化した第2世代エピジェネティック・クロック。生物学的年齢・老化スピード・15項目以上の健康指標を報告。方式の記載は Tomo & Nakaki, 2024 に基づく)。

4. Fahy GM, ほか. Reversal of epigenetic aging and immunosenescent trends in humans. Aging Cell. 2019;18(6):e13028.(少人数ながら、介入でエピジェネティック年齢の指標が動きうることを示した先行研究。速度・年齢が"固定ではない"文脈の背景。)


編集方針・免責事項

  • 本記事は公開された学術文献・企業発表・検査サービス情報の整理であり、診断・治療・特定の食品や検査の推奨や否定を目的とするものではありません。
  • 紹介した数値(約2.3%の減速など)は特定の小規模・短期・探索的試験での報告であり、対象・介入・測定法により結果は変わります。効果を保証するものではありません。
  • 森永乳業の試験は同社が主体であり、利益相反を踏まえて解釈する必要があります。
  • 生物学的年齢・老化速度の検査結果の解釈は、用いる時計・検体・測定条件に依存します。単一の数値をもって健康状態を断定するものではありません。
  • 健康状態の評価や検査・食品の選択については、医療専門家にご相談ください。
  • 情報は最終更新時点のものです。最新情報は原著・各社の発表をご確認ください。

この記事は WSN. 私たちは、死なない。 編集部により2026年7月に作成・公開されました。新しい情報が出れば随時更新します。

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老化速度DunedinPACEエピゲノム時計生物学的年齢検証

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